薄い金属板金を曲げて加工し、製品を作る作業を「板金」と言います。電気のブレーカーボックス等薄板の製品には、板金加工が行われているものが多くあります。ここでは機械板金加工・プレス機械作業に必要な、薄板鉄鋼材のレーザー加工等を用いる切断、曲げ加工等の基本的要素技能及び関連知識を習得します。産業用ロボットの教示、動力プレス特別教育の修了証が発行されます。
※写真は、プレスブレーキという機械で薄板鉄鋼材を曲げている所です。
金属加工科(企業実習付きコース)(訓練期間7ヶ月)のご案内
訓練の概要(訓練により習得できる技能)
金属加工技術は、板取り、展開、切断加工、曲げ加工、組立、溶接など多数の技術を含んでいます。これらの技術を若年者の方を対象に、基礎知識から学びます。
JIS溶接技能者評価試験が受検でき、ガス溶接技能講習、アーク溶接、研削といし取替え、産業用ロボット、動力プレス、クレーン運転等の特別教育修了証が取得できます。
カリキュラムでは、訓練修了時の仕上がり像を設定しており、関連職種に幅広く対応できるようにしています。また、施設内訓練で習得した基礎的な技能知識を基に企業で約1ヵ月間実習を行います。
訓練全体(7ヶ月間)の目標人材像(訓練目標)
- 工作にともなう罫書き、測定、切断等の作業や機械板金作業及びTIG溶接法等による各種金属の溶接作業の習得を目指します。
(下記写真の訓練課題例参照)
【訓練課題例】



総訓練時間
- 6月開講、12月開講 813時間
7月開講、1月開講 717時間
1カ月ごとの訓練目標
1.「導入講習」
就職に対する自己理解を促進するため、「自分の強み・弱みの表現」、「受講動機、能力を伸ばす方向性の明確化」、「やりたい仕事の探索」、「企業に関する情報収集」を行い、就職に必要な基礎知識としてコミュニケーションの基本やビジネスマナー、職務経歴書の書き方などを学びます。
また2ヶ月目以降の実践訓練に必要な基礎知識として図面の見方や関連職種で行われている作業の訓練体験を行います。
2.「機械板金・プレス作業・ロボット溶接」

3.「TIG(ティグ)薄板溶接」
ティグ溶接は、工業的に使用される様々な金属を高精度、高品質に溶接することが可能で、県内ではステンレス業界を中心にその適用が拡大しています。ここでは、ステンレス鋼のほか、アルミニウム合金のティグ溶接に関する技能、技術を習得します。任意で、JIS溶接技能者評価試験を受験することが可能です。
※ティグ溶接は、火花が発生しないという特長もあり、その作業性から、最近女性にも人気が高くなってきています。

4.「金属加工基本」
機械工作法の概要と簡単な図面の読み方、ボール盤や切断機等の工作・産業機械の取扱い操作、自由研削といしの取替え試運転、また、ガス炎による溶接や溶断、プラズマアークによる切断(プラズマ切断)等、金属加工に関する技能、技術を習得します。
※自由研削といし取替え試運転、クレーン運転に関する特別教育やガス溶接技能講習の修了証が発行されます。

5.「炭酸ガスアーク溶接」
一部自動化された溶接法で、鉄鋼材料に適用されます。造船所、鉄工所など、溶接製品として大きい製品を作る企業で多く使われている溶接法です。
就職活動に有利なJIS溶接技能者資格の基本級(SA—2F)習得を目標に訓練していきます。
※半自動アーク溶接は、被覆アーク溶接に比べ高能率、高品質でかつロボット等の自動化に適することから現在、鉄鋼材料の溶接の主流になっています。

6.「非破壊検査」
ここでの非破壊検査作業は、主として溶接構造物を対象に実施します。浸透深傷試験や超音波深傷試験など、各種非破壊検査の基本操作や技能、関連知識を習得します。
※非破壊検査のほかに引張り試験や曲げ試験などの破壊検査もありますが、これらについては、『被覆アーク溶接作業』や『炭酸ガスアーク溶接作業』の中で、溶接技量の確認手法として実施します。

7.「企業実習・フォローアップ訓練」
訓練期限内の数週間、実際に企業の仕事を体験することができます。
訓練で身につけた知識、技能をもとに実際の現場を体験することで、実践力を身につけます。
<企業実習におけるメリット>
・金属加工の現場の実態を知ることができる。
・企業の雰囲気や社風を知ることができる。
・実際の現場の高度な技術を体験できる。
・実習先から社員として採用されることもある。

8.「フォローアップ訓練」
企業実習における課題や疑問点について解決し、実務における問題解決の手法を習得します。
受講要件
応募資格
- 45歳未満の方
- 企業実習付きコース修了後に常用雇用への就職を希望している方
- 現在無業であるか、パート、アルバイト等の不安定な就労を繰り返している状態にある方
- 公共職業安定所長の受講指示又は推薦を受けた方
- 公共職業安定所に求職申込みをされている方
過去の溶接経験
- 特に必要ありません
事前に習得していることが望ましいスキル
- 知識・技術的なことは特にありません。
各訓練科共通要件
- 再就職を強く望んでおり、職業訓練を受講することに強い意欲を有している方
- 離職者訓練コースの内容を理解し、就職を希望する職務と入所希望訓練科との整合性がある方
- 職業訓練の安全確保及び訓練に支障を来さないような健康状態である方
- 職業訓練を受講する上で必要な、集合訓練における協調性のある方
※受講希望者が多数の場合、上記の条件を満たしていても受講できないことがあります。
受講料
無料です。
ただし、教科書代(約20,000円)については、実費負担となります。
受講生の入所前の職種と修了後に就職した職種
設備管理が未経験の方でも、下記のような溶接と関連する職種に就職されています。
(前職) (修了後の職種)
・家電販売 → 非破壊検査作業員
・ハウスクリーニング→ 溶接工
・接客 → 溶接工
・配送 → 精密板金
訓練に関する職種と仕事内容
主な職種
- 溶接・鉄工・研磨業務、板金加工業務、プレス加工業務、非破壊検査業務
溶接工の仕事
ものづくりにはかかせない基幹技術である『溶接技術』は、その適用分野が自動車、船舶、建築、鉄道車両、産業機械、食品機械、化学工業、家電など多岐にわたっています。
また、対象となる製品によって、材質や板厚、接合する継手形状が大きく異なり、要求される品質事項からも溶接法の種類や施工法(ロボットなどの自動化技術含む)が数多くあります。
このような状況から、溶接工の仕事内容は多様化しており、その難易度も様々です。実際に、"容易な加工方法で、ただ単に接合できていれば良いものから溶接継手の強度等、極めて要求品質が厳しいもの"まであります。
職種との相性(こんな方に向いている)
"ものづくり"に興味があり、じっくり忍耐強く仕上がりを重視した作業ができる方。性別は全く問いません。
ただし、上述したように、溶接工の仕事の内容、密度は、様々であり、逆に言えば、自分の性格や技量、技術に向いている業界を選択できます。よく、『溶接の仕事は、つぶしが利く』と言われるのは、このためです。
訓練により就職可能な主な仕事
- 溶接作業による各種の構造物等を製作する業務
- 薄板の切断、曲げ加工による精密板金業務
- 溶接前の工程や解体、補修も可能な構造物等の切断、溶断業務
- 溶接施工関連の見積もり、工程管理等の業務
求人票に記載されている職種名
電気溶接工、半自動溶接作業、ティグ(アルゴン)溶接工、製缶工、ロボット溶接オペレ−タ、板金・組立工、スポット溶接工、ガス切断工、非破壊検査作業員
就職後の仕事例(求人票より)
- 自動車部品の半自動溶接作業
- 自動車部品(ステンレス鋼)のティグ溶接作業
- 自動車部品のロボット溶接(炭酸ガス、マグ溶接法)
- トラックコンテナの製作、半自動溶接作業
- 特装車のコンテナ、部品の半自動溶接、荷台部分のティグ溶接作業
- 自動車ドアのパレット製作(プラズマ切断、半自動溶接)
- 建設機械部品の半自動溶接作業
- ティグ溶接、半自動溶接によるアルミニウム製水門の製作
- 専用焼却炉の設置、修繕(被覆アーク溶接)
- サインの取付け現地工事(被覆アーク溶接)
- 建築金物の製作(半自動溶接、ティグ溶接)
- 建築構造物、屋外現地作業(被覆アーク溶接)
- 建築構造物、工場内鉄骨コラムの製作(半自動溶接)
- 輸送船の補修、修繕作業(被覆アーク溶接、半自動溶接)
- 新造船建造(プラズマ切断、ガス切断、半自動溶接)
- 鉄道車両の補修、修繕作業(半自動溶接)
- 各種の溶接材料、ガス、溶接機器の販売、技術アドバイザー
- 配電盤用ケースの製作(ティグ溶接)
- 産業用機械の部品製作(半自動溶接、ティグ溶接)
- 食品機械の部品製作(プラズマ切断、ティグ溶接)
- 業務用ボイラの製作(被覆アーク溶接、ティグ溶接)
- 構造物等の非破壊検査
就職率
97.2%(平成27年度実績)
95.5%(平成28年度実績)
100%(平成29年度実績)
修了者の主な就職先
- フェニックス工業株式会社
- 中国ベンド株式会社
- 株式会社新星工業社
- 株式会社河野ボデ—製作所
- 日鋼テクノ株式会社
賃金情報
修了者の採用時の賃金(給与総支給額)実績
- 平均13万円から27万円
訓練で習得した職業能力の就職先での活用状況
訓練を修了すると全員が被覆アーク溶接、半自動アーク溶接、ティグ溶接およびその関連技術に関する基礎的な技能・技術を習得しています。
就職先では、これらを活用して即戦力で活かせる場合と、OJTを必要とする場合があります(溶接作業の難易度が業種等により異なるため)。
金属加工科(企業実習付きコース)で学んだ知識、技能を基礎に、ベテラン技能者から短期間のOJT指導を受け、自分なりの応用を加えていく事により技能者として成長していきます。
就職した後、熟練技能者からのOJTによって技能を向上させ、JIS溶接技能評価者試験、およびアルミニウム技能者評価試験の専門級(※詳細は後述)を受験する事になります。
修了生に聞くと「OJTとはいっても、金属加工科(企業実習付きコース)で学んだ基礎があるからこそ効率よく技能レベルが向上した。」という意見が多くあります。 就職先の企業からは「仕事に必要な溶接関連の資格を取得し、未経験者と比べ、ものづくりを訓練で学び、基礎知識、技能を持っており、仕事を覚えるのも早く、短期間で戦力になります。新しく導入した機器の操作や、溶接など幅広く活躍しています。」という意見もあります。
写真は、精密板金業の会社に就職し、ステンレスの製品をティグ溶接している修了生です。 このように、ある程度OJTが必要な場合でも技能において、修了生は着実に実力を発揮しており、就職先の企業からの評判も上々です。

平成24年度修了者の就職先での製作事例
訓練修了時に取得できる資格
ガス溶接技能講習修了証 (広島労働局登録教習機関第23号、登録有効期間満了日平成31年3月30日)
ガス溶接等の業務は、労働安全衛生法第61条によって下記の者でなければ就業してはならないこととされております。当センターは、2)の都道府県労働局長の登録を受けた教習機関(広島労働局長登録教習機関23号)となっており、訓練修了者に対してガス溶接技能講習修了証が交付されます。
- ガス溶接作業主任者免許の所持者(都道府県労働局長が交付)
- ガス溶接技能講習修了証の所持者(都道府県労働局長の登録を受けた教習機関が交付)
- 上記に該当し満18歳以上の者
アーク溶接等の業務に係る特別教育修了証
労働安全衛生法59条第3項及び労働安全衛生規則第36条で、アーク溶接等の業務に労働者を就かせるときは、事業者が「安全衛生特別教育規程」に基づく安全または衛生のための特別の教育が義務づけられています。
本特別教育は、訓練中に実施し、修了時に特別教育修了証が当センター所長名で交付されます。
自由研削といしの取替え業務に係る特別教育修了証
労働安全衛生法第59条第3項及び労働安全衛生規則第36条で自由研削といしの取替え、取替え時の試運転業務等を行う業務に労働者を就かせるときは、事業者が「安全衛生特別教育規程」に基づく安全または衛生のための特別の教育が義務づけられています。
本特別教育は、訓練中に実施し、修了時に特別教育修了証が当センター所長名で交付されます。
クレーン運転業務に係る特別教育修了証
労働安全衛生法59条第3項及び労働安全衛生規則第36条で、5トン未満のクレーン運転の業務に労働者を就かせるときは、事業者が「安全衛生特別教育規程」に基づく安全または衛生のための特別の教育が義務づけられています。
本特別教育は、訓練中に実施し、修了時に特別教育修了証が当センター所長名で交付されます。
動力プレスの金型等の取付け、取り外し、又は調整の業務に係る特別教育修了証
労働安全衛生法59条第3項及び労働安全衛生規則第36条で、動力により駆動されるプレス機械の金型の交換や調整の業務に労働者を就かせるときは、事業者が「安全衛生特別教育規程」に基づく安全または衛生のための特別の教育が義務づけられています。
本特別教育は、訓練中に実施し、修了時に特別教育修了証が当センター所長名で交付されます。
産業用ロボット教示等業務に係る特別教育修了証
労働安全衛生法59条第3項及び労働安全衛生規則第36条で、産業用ロボットの操作・教示等を行う業務に労働者を就かせるときは、事業者が「安全衛生特別教育規程」に基づく安全または衛生のための特別の教育が義務づけられています。
本特別教育は、訓練中に実施し、修了時に特別教育修了証が当センター所長名で交付されます。
任意に取得する資格
訓練期間中に受講者の皆さんが習得した技能を活かして任意に受験して取得できる資格の一例です。受験手続きの説明や合格できる技能レベルへの到達は訓練中十分可能です。(※但し、合格を保証するものではありません。詳細につきましては、各実施機関へお問い合わせ下さい。)
手アーク溶接および半自動アーク溶接技能者資格(訓練開始3~4ヶ月目に実施)((社)日本溶接協会)
業界内で最も受験者が多く、広く認知されている公的資格で、(社)日本溶接協会が実施、運営をしております。合格者に「○○溶接適格性証明書」が交付されます。この証明書には、(財)日本適合性認定協会のマーク(JABマーク)が刻印されており、ISOに対応した国際性の高い資格であることが伺えます。
本資格には、基本級(下向姿勢の溶接)と専門級(立向、横向、上向姿勢および管の溶接)があり、さらに試験材料の種類と厚さ、溶接方法などとの組合せにより45種類ほどに資格が分かれます。金属加工科では、基本級の受験をすることで、溶接訓練をする上での目標とし、就職活動に少しでも有利になるようにしています。
評価試験は学科試験と実技試験によって実施されます。
ステンレス溶接技能者資格((社)日本溶接協会)
上述した(社)日本溶接協会が実施する溶接技能者資格の一種で、金属加工科の訓練内容から、ステンレス鋼のティグ溶接での受験(基本級)となります。この種目は板厚が1種類しかなく、3mm厚の薄板となります。近年、県内でのステンレス鋼ティグ溶接のニーズが高くなっていることから、訓練生の受験が増えてきています。
アルミニウム溶接技術検定資格((社)軽金属溶接構造協会)
(社)軽金属溶接構造協会が実施、運営しているアルミニウム溶接業界唯一の公的資格です。受験の形態などは、(社)日本溶接協会の溶接技能者評価試験と類似しています。金属加工科の訓練内容から、薄板(板厚が3mm)のティグ溶接での受験(基本級)となります。県内では、アルミニウム鋼程仕事は、多くありませんが、特殊性が高いため、資格保有者が優遇されます。
広島県での受験が時期的に年2回(現在、6月と12月)となっておりますので、訓練生の入所時期によっては他府県で受験していただくことになります。
玉掛け技能講習修了証((社)広島県労働基準協会)
労働安全衛生法施行令 第20条 第16号によれば、"制限荷重が1トン以上の揚貨装置又はつり上げ荷重が1トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリックの玉掛けの業務"となっており、1トン以上の荷物を玉掛け作業する場合、玉掛け技能講習修了証が必要になります。
「クレーンの運転」と「クレーンに荷物をかける作業」では必要な資格が異なるので、実際の作業では、「クレーン運転の資格」とこの資格を取得している必要があります。
各種非破壊試験技術者資格((社)日本非破壊検査協会)
非破壊検査は、材料、機器、構造物(溶接部)等の安全を確保するために必要な作業で、実務において、検査結果の精度は非破壊試験技術者の技量に大きく左右されます。誰が行っても、何度行っても同じ結果、同じ評価が得られなければなりません。そのためには非破壊試験技術者の技術レベルを一定にしておく必要があります。この資格は、業界では認知されている公的資格で、合格者には、(社)日本非破壊検査協会から「○○試験・レベル○非破壊試験技術者資格証明書」が交付されます。
●浸透深傷試験レベル2技術者
就職後のスキルアップ
就職後は、当センターで実施しています短期間の在職者向け職業訓練(能力開発セミナー(有料))を受講、就職先の実務経験を活かして、国家資格である技能検定に挑戦、(社)日本溶接協会の溶接技能者評価試験を受験するなど、さらにスキルを向上させることができます。
当センターでは、就職後においても新たな職業能力の習得やこれまでの職業能力の更なる向上に係る相談・支援を行っています。お気軽にご相談下さい。
お問い合わせ先
離職者訓練担当
TEL
082-245-0230
FAX
082-245-3926