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港湾の仕事及び港湾技能者に必要な資格について

日本の産業を支える港湾の仕事と港湾技能者に必要な港湾資格

 天然資源に乏しいわが国では、我々の生活や産業を支えている鉱物資源(鉄鉱石・ニッケル等)は、ほぼ100%、エネルギーの約9割、食料の約6割を海外に依存し、更に、それらの資源を輸入して付加価値の高い製品を生み出して輸出している我が国では、輸出入物資の99.6%(重量ベース)、国内輸送の約50%(重量ベース)が港湾を経由しており、我々の生活の安定及び経済の発展のためには、港湾物流ネットワークは必要不可欠です。
 平成27年度に港湾を経由している貨物は約15億トン、この数字は国民1人あたりに換算しますと、約9.8トン(2tトラック5台分以上)の貨物が船舶で輸出入されており、年々増加傾向にあります。
 令和元年度の全国開港別貿易額は、輸入では東京、名古屋、横浜港の順、輸出では名古屋、横浜、東京港の順で、輸出入を合わせると自動車関連企業の多い名古屋港が173,916億円(総取扱貨物量19,944万t)と日本の貿易港の中で一番多い貿易額(2年連続)となっています。
 国内物流においは、貨物を積んだトラックが高速道路を走って輸送する形態が主流ですが、最近ではドライバーの人材不足及び排気ガスによる環境破壊といった課題を抱えていることから、フェリーやRORO船と呼ばれるトラックが自走で乗り降りできる貨物船を使用し、車両ごと貨物を輸送することも取り組まれています。

日本の主な原材料及び所領等の自給・輸入率

石炭 輸入率99%、天然ガス 輸入率98%、石油 輸入率99%、鉄 輸入率100%、ニッケル 輸入率100%、豚肉 輸入率93%、牛肉 輸入率89%、小麦輸入率85%、牛乳及び乳製品 輸入率73%、果実 輸入率60%、魚介類 輸入率41%、野菜 輸入率20%、コメ(主食用) 輸入率0%



輸出入を支える港湾運送事業

 海と陸との結節点の「港湾」において港湾運送事業は、船舶と陸上各機関との間に立って、貨物の受け渡し、荷さばき、各種証明などの事業を行う業界です。
 こうした仕事を円滑に遂行するためには、貨物の積み降ろしに必要な人員や機材・施設を保有しているだけでなく、機器を安全に運転操作をするための資格や様々な形式の船舶を柔軟かつ的確に対応できる作業方法・技術やノウハウ等が必要になっています。

 港湾運送事業所は、「港湾運送に関する秩序を確立し、港湾運送事業の健全な発達を図り、もって公共の福祉を増進すること」を目的とした「港湾運送事業法(国土交通省)」によって、次のような事業に分類されています。

  (1)港湾運送全体にわたってサービスを提供する一般港湾運送事業
  (2)船内・沿岸の荷役作業を提供する港湾荷役事業
  (3)港湾内や指定区間を艀(はしけ)輸送する艀運送事業
  (4)主に木材を筏(いかだ)に組んで運ぶ筏運送事業
  (5)貨物の積卸しの際、個数を計算したり受渡しの証明をする検数事業
  (6)船積貨物の容積、重量の計算および証明をする検量事業
  (7)貨物の積付けや事故について証明・調査・鑑定をする鑑定事業

 新たに港湾運送事業を開始(創業)するには、一定数の労働者・施設を保有していることや運賃・料金の事前届出制、再下請けの禁止等の下請制限等の規制があります。

 四方を海に囲まれている日本は、港だらけで、漁港を含めると約3,000近くの港があります。その中で、港湾運送事業法の適用対象港は、全国に94港あります。
 愛知県では、名古屋・衣浦・三河港、三重県では、四日市港が指定港となっています。
 その中でも、名古屋港と四日市港は、港湾法(国土交通省:港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに、航路を開発し保全することを目的とした法律)で特定重要港湾(国の利害に重大な関係を有する港湾である重要港湾のうち外国貿易の増進上特に重要な港湾)にもなっています。

 昭和51年以降、港湾労働者年金制度に加入している適用事業者(全国567店社(平成30年12月末現在))で働く登録港湾労働者(適用対象職種に従事する労働者)は、退職時に、制度に加入している事業所に18年以上勤続する等一定の受給資格要件を満たし、受給権者として裁定された方を対象に、年額25万円の年金を満60歳から満81歳までの間の15年間受け取れる制度があります。

 ポリテクセンター名古屋港では、「港湾運送事業法」の(2)の船内・沿岸の荷役作業を提供する港湾荷役事業所への就職や従事する方々のために必要な職業訓練を実施しています。
 

港湾労働法の適用を受ける港湾労働者

 「港湾労働法(厚生労働省)」は、「港湾労働者の雇用の改善、能力の開発・向上などに関する措置を講ずることにより港湾運送に必要な労働力の確保に資するとともに、港湾労働者の雇用の安定その他の港湾労働者の福祉の増進を図ること」を目的とした法律です。
 この法の適用対象となる港湾は、港湾における荷役量、港湾労働者の数等を考慮して、名古屋港をはじめ東京、横浜、大阪、神戸及び関門港の6大港です。
 この法律により、
  (1)厚生労働大臣は、主要港湾ごとに港湾雇用安定等計画を策定すること。
  (2)港湾労働者の雇用の改善、能力の開発および向上等を促進すること。
  (3)港湾労働者雇用安定センターに労働者派遣を行う体制を整備すること。
等が規定されています。

 「港湾労働法」では、港湾運送の業務に従事する常用労働者の届出が義務付けられており、届出のあった港湾労働者に対して、違法就労を防ぐため、ハローワークを通じて「港湾労働者証」が交付されます。
 「港湾労働者証」の交付を受けた労働者は、港湾運送の業務に従事する時に「港湾労働者証」を携帯しなければならないことになっています。名古屋港では、令和3年2月現在「港湾労働者証」を所持している方が5,500人程、船内1,800人程度、沿岸2,500人、倉庫800人、はしけ20人、いかだ30人程が登録されています。

 ポリテクセンター名古屋港では、「港湾労働法」港湾労働者の能力開発および向上(上記条文の(2))を目的として、名古屋港で働く港湾労働者の方々に対して人材育成を実施しています。

港湾を担う船内・沿岸荷役作業者

国際海上輸送の流れ

 国際海上輸送において、コンテナ貨物の取扱量は年々増加し、日本の港湾運送量全体の4割、名古屋港を含む6大港では7割を占めています。こうした流れから船舶の大型化及び名古屋港でも大型コンテナ船の寄港に対応した港湾施設の整備や大型の荷役機械の設置が進められています。
 こうした背景からコンテナの取扱いやコンテナ荷役に関係した機器の運転技能者、荷役機器や重機の運転技能者やメンテナンスのできる人材育成の必要性が高まっています。

     

  飛島ふ頭南側コンテナターミナル《資料提供》名古屋港管理組合

飛島ふ頭南側コンテナターミナル 《資料提供》名古屋港管理組合

       ガントリークレーン《資料提供》名古屋港管理組合

コンテナ船とガントリークレーン 《資料提供》名古屋港管理組合

港湾荷役作業者

 港湾荷役作業者は、港湾運送事業所に雇用されていて、船舶と港でのコンテナなど貨物の積み卸しや運搬を行います。
 船舶の係留場所別によって、船舶を沖合に停泊させ、はしけ(艀)やパイプライン等を利用して貨物の輸送を行う沖荷役と船舶を岸壁などの陸岸に直接横付けして荷役を行う接岸荷役とに分けられます。はしけ(パージ)は、積載重量が50~200トンで船底が平らなため、ばら積み貨物である砂・セメント・石炭・穀物や重量物の運送に使われています。
 港湾荷役は、貨物受渡しの境界区分からは、船内荷役と沿岸荷役に分かれています。

港湾荷役作業員(職業情報提供サイト(日本版O-NET)職業紹介動画)(厚生労働省)

船内荷役作業者

 船内荷役の作業では、船舶に乗り込んで貨物の積み卸し作業を行います。
 船内荷役作業者は、ギャング(海運業界においては、船舶から貨物を積み卸す荷役作業グループのこと)編成で船舶に乗り込み、デッキマンと呼ばれる作業指揮者が揚貨装置やガントリークレーンを動かす技能者に合図を送り、船倉に積まれた貨物を吊り上げて、港に降ろす作業を行います。在来船の1ギャング構成は、11~13人程度でハッチ単位、コンテナ船では1ギャング8人程度、ガントリークレーン単位で構成されています。
 その時の一般技能者は、ウインチの吊り具の掛け外し(玉掛け作業)、船倉の奥の荷物をフォークリフト等で運び出す作業、ワイヤーを巻きつける作業等を共同で行います。

コンテナ船荷役

ガントリークレーンによる船内荷役作業 《資料提供》名古屋港管理組合

在来船

重量物(特急車輛)の船内荷役作業《資料提供》名港海運㈱

フォークリフトによる船内荷役作業

      フォークリフトによる船内荷役作業

バルク貨物

バルク貨物(石炭、鉱石、穀物類等)の船内荷役作業 《資料提供》東洋船舶作業㈱

車両船荷役

自動車専用船(RO/RO船)の船内荷役作業 《資料提供》名古屋港管理組合

 船内荷役作業では、貨物の種類・性質・数量・大きさ・重さや荷姿によって、揚貨装置(船舶上のクレーン)、ガントリークレーン、フォークリフト、ブルトーザー等種々の重機を運転操作して貨物の積み卸しを行います。
 事業者は、労働安全衛生法(昭和47年6月8日法律第57号)第61条おいて、「政令で定める一定の業務(重機を操作運転する業務)については、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関が行う当該業務に係る技能講習を修了した者、その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。」と定められています。
 そのため、揚貨装置運転士免許やクレーン・デリック運転士免許(ガントリークレーンを運転操作するために必要)、玉掛け・フォークリフト運転・車両系建設機械(整地等)運転技能講習修了証等の資格が必要になります。

沿岸荷役作業者

 沿岸荷役の作業者は、岸壁側やふ頭ターミナルで監督の指示を受けながら、岸壁と屋根がついた貨物置場(上屋:うわや)や荷さばき地、野積場の間で貨物の運搬や搬出を行い、荷さばき地では、貨物の積み上げと取り崩し、仕分けなどの荷さばき作業を行います。
 貨物の運搬や搬出及び積み上げと取り崩し、仕分けなどには、フォークリフト、ショベルローダー、リーチスタッカー、トップリフター、RTG(タイヤ式テナーガントリークレーン)等の機械装置や港湾内の運搬・回送するために大型自動車が使用されています。
 倉庫においては、荷役作業の主役はフォークリフトで、複数のフォークリフトを互いに連携を取り合いながら作業を行います。更に、パレットと呼ばれる荷台に貨物を積み上げる作業や輸出入貨物をコンテナに詰めるバンニング作業や反対に輸入貨物をコンテナから出すデバニング作業が行われています。こうした仕事には、効率よく作業をするための知識や荷崩れをさせないように積み上げる技能と経験が必要となります。

鍋田ふ頭のRTG(タイヤ式テナーガントリークレーン) 《資料提供》名古屋港管理組合

鍋田ふ頭のRTG(タイヤ式テナーガントリークレーン)による沿岸荷役作業 《資料提供》名古屋港管理組合

リーチスタッカーによる沿岸荷役作業

     リーチスタッカーによる沿岸荷役作業

倉庫作業

コンテナへ貨物積込み、トップリフターによる沿岸荷役作業《資料提供》東海協和㈱

港湾内の陸送作業

港湾内にコンテナを運搬・回送を行う沿岸荷役作業 《資料提供》名古屋港管理組合

 沿岸荷役作業においても、船内荷役と同様に重機の運転操作には、資格が必要です。
 クレーン・デリック運転士免許(RTGを運転操作するために必要)や大型特殊自動車運転免許、移動式クレーン運転士免許、玉掛け・ショベルローダー運転等(リーチスタッカーを運転操作に必要な技能講習(機器メーカー推奨))・フォークリフト運転の技能講習修了証の資格が必要になります。

港湾荷役作業者に必要なスキル

 就職に当たって、特に学歴や資格は必要とされませんが、体を動かす仕事のため、一定の体力が必要ですし、作業が常にチームを組んで共同作業で行われることから、規律を守る協調性と機敏性などが求められます。
 更に、国際海上輸送のコンテナ化や大型専用船の導入、機械化によって作業の効率化が進んでおり、技術の進歩に対応できる専門知識や技能を持った人材が必要になっているため、ポリテクセンター名古屋港を含め港湾関係の教育訓練施設を修了し、クレーン・デリックや揚貨装置運転士免許、大型特殊自動車免許、フォークリフト運転や玉掛け技能講習等の必要な資格を取得してから就職する場合もあります。

 企業に正社員として採用された場合は、経験・実績や船内荷役作業主任者(取得には、荷役作業で使う揚貨装置やクレーン・デリック運転士免許を取得後4年以上の実務経験が必要)などの資格取得によって班長、主任等へ昇進するケースもあります。

 就職に当たって特別な資格は必要とされていませんが、機械操作を行って安全に荷役作業を行うためには、必ず資格がなければ、運転操作はできません。
 普通自動車免許証は必須で、玉掛けやフォークリフト運転技能講習修了証の資格は、入社後直ぐに必要となる資格です。
 企業によっても様々ですが、クレーン・デリックや揚貨装置運転士免許を取得するには、入社後5~10年してからではないと取得できない場合もあるため、関連した資格を取得して就職した方が給与面でも有利となります。
 

稲永ふ頭「《資料提供》名古屋港管理組合」

稲永ふ頭 《資料提供》名古屋港管理組合

港湾荷役作業に必要な資格(港湾資格・ライセンス)

 
 港湾荷役作業をするためには、作業方法及び重機の種類によって、様々な資格が必要となります。
 ポリテクセンター名古屋港の港湾荷役科を修了した時点で、下記「※港湾荷役作業及び各重機の運転・操作に必要な資格(関連も含む)」の「可」部分の機械装置運転操作及び資格に関連した作業に就くことが可能です。
 

 ※港湾資格(港湾荷役作業及び各重機の運転・操作に必要な資格(関連も含む)) (173.06 KB)



 港湾荷役作業に関係した労働安全衛生法に定められた国家資格(免許)には、「クレーン・デリック運転士免許(限定なし)」、「移動式クレーン運転士免許」、「揚貨装置運転士免許」の港湾3運転士免許があります。更に、フォークリフト等を公道で走行するために「大型特殊自動車運転免許」が必要になります。

 国家資格(免許)の中で一番難易度が高いのは「クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)」で、試験は全国7ブロック(北海道、宮城県、千葉県、愛知県、兵庫県、広島県、福岡県)の(公財)安全衛生技術試験協会で学科試験と実技試験が行われ、毎年24,000人前後の方が受験し、合格率は令和元年度が58%、平成30年度55.3%、平成29年度45%となっています。

 「移動式クレーン運転士免許」も全国の(公財)安全衛生技術試験協会で試験が行われ、毎年6,000人前後の方が受験し、合格率は令和元年度が65.3%、平成30年度63.1%、平成29年度59.8%となっており、少しだけ「クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)」よりも合格率が高くなっています。

「揚貨装置運転士免許」も(公財)安全衛生技術試験協会で学科試験と実技試験が行われ、毎年600人前後の方が受験し、合格率は令和元年度が70.4%、平成30年度74.6%、平成29年度74.6%となっています。

 各技能講習においても学科・実技教育を行うことを目的として、労働安全衛生法第77条の規定により、各都道府県労働局に登録された登録教習機関で教育・試験が行われています。技能講習の学科・実技試験は、上記運転士免許試験よりも難易度は低いですが、有害・危険な業務に従事する場合には、技能講習又は特別教育を受講した方でないと就業できません。

 ポリテクセンター名古屋港の港湾荷役科で内部試験に合格すると共に1年間の課程を修了すると、「クレーン・デリック運転士免許(限定なし)」、「移動式クレーン運転士免許」が申請だけで取得できます。
 玉掛け・フォークリフト運転・ショベルローダー運転等の業務については、技能講習と同等の資格である「職業訓練修了証明書」が付与されます。
 更に、訓練期間中に「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習」、外部受験で「揚貨装置運転士免許」と「大型特殊自動車運転免許」を取得しています。


  

船内・沿岸荷役作業者を含め港湾業界等の人材育成

 港湾荷役・物流に関連した職業訓練を実施している施設は全国に4施設ありまして、ポリテクセンター名古屋港の他に、ポリテクセンター大阪港、横浜と神戸に2年制のポリテクカレッジ横浜港とポリテクカレッジ神戸港があります。
 港湾荷役・物流に関連した職業訓練施設は、

※港湾業界等の人材育成(施設を紹介したページ)



として紹介されています。
 この4施設では、高校を卒業(見込)した方や求職中の方など、港湾荷役・物流に関連した企業に就職を目指す方々に必要なスキルを習得いただくための公共職業訓練を実施しています。