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受託研究、共同研究

土塗壁の耐震性向上のための物理的および技術的研究

(実施年度:2006年度)

担当:宇都宮直樹、出口秀史、山下世為志、大塚泰夫、板倉真、行武俊和(専門課程 住居環境科)

四国職業能力開発大学校では、田園都市設計を代表とする土壁ネットワークとの共同研究を行っています。
この研究を通し地域に受け継がれた土塗壁の材料と構法を新たな視点から見直しを行い、土塗壁が普通につくられる社会的な環境を整え、次の世代へ渡していかなければなりません。新たな視点とは、土塗壁が木造住宅の耐力壁であるという見方です。土塗壁はただ美しいだけではなく、住み手(ユーザー)の生命と財産を守るものであり、信頼できる土塗壁をつくる体制を整えなければなりません。そのために以下に示す、研究計画をもとに、住宅の長寿命化に対応した伝統型技術・材料への工学的見地にたった再評価、さらに耐震性能向上を図るための技術研究的を行っています。

目的

平成13年国土交通省住宅局は、木造住宅の長寿命化を目的とした「長寿命木造住宅推進プロジェクト」を立ち上げ、地域の伝統的材料と技術を活かした住まいづくりを推進するための環境整備に乗り出しました。その成果が平成15年に行われた「土塗壁等の壁倍率に関する告示改正」であります。
この告示改正により、これまで土塗壁は耐力壁としての性能(耐震・耐風性能)が、一定の材料と仕様規定を満たすことができれば、2~3倍に再評価がなされ、筋交いや構造用合板に依存しなくても、土塗壁で耐震設計が可能となりました。
一方では、この改正に伴い、地域に伝わる構法との食い違いなどが生じているため、そのままの仕様規定では普及することは難しく、逆に地域に伝わる伝統的材料と技術を消滅させてしまう状況にあります。
地域の土壁の性能向上と普及を進めるにあたり研究の目的を下記の通りとしています。

  • (1) 香川県における壁土の圧縮強度の実態調査
  • (2) 壁土の練り置き期間が圧縮強度に与える影響について
  • (3) 土塗壁の実大面内せん断試験

香川県における壁土の圧縮強度の実態調査

壁土の製造(壁土の配合割合)は、製造者の長年の経験に依存しています。そこで現在製造されている壁土を日本住宅・木材技術センターの土塗壁・面格子壁・落とし込み板壁の壁倍率に係る技術解説書による壁土の圧縮試験方法に準拠して圧縮強度の実態調査を行い、強度特性を把握することを目的としています。

壁土の練り置き期間が圧縮強度に与える影響について

土壁の中には、藁スサが練り混ぜられて施工されています。この藁スサは、土塗壁施工後の乾燥収縮の防止の役割を担います。また、水合わせの期間(壁土と藁スサを練り合わせて施工するまでの期間)が長くなると圧縮強度の増加することも報告されており、香川県内の壁土を使用した際の水合わせ期間による壁土の圧縮強度特性への影響を得ることを目的としています。

土塗壁の実大面内せん断試験

香川県内における代表的な壁土を用い、技術解説書における土塗壁耐力壁と香川県内に伝わる構法によって作られた土塗壁耐力壁とを実大面内せん断試験を行い、耐力壁として構成された時の耐震性能を明らかにし、限界耐力設計法で使用可能な基礎データを得ることを目的としています。

土壁 圧縮試験装置
土壁 圧縮試験装置

土壁 実大試験体
土壁 実大試験体

土壁 藁スサ配合状況
土壁 藁スサ配合状況

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