ブックタイトル溶接技能・技術で働く(溶接編)

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概要

溶接技能・技術で働く(溶接編)

auikou「従業員みんなが誇りを持てる仕事に挑む!!」“東成エレクトロビームのプライド”東成エレクトロビーム(株)は、東京都の多摩地区に所在する従業員60名ほどの会社です。電子ビームやレーザの高度な加工技術による受託製造加工を主たる事業とした創業42 年の中小企業です。当該企業が一躍脚光を浴びるキッカケとなったのが、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のプロジェクトである「はやぶさ2」の開発に関わったことです。「はやぶさ2」のミッションの中に、小惑星リュウグウから試料を採取する際に、衝突体を爆破させ、人工クレーターを作ることで深部の試料も採取し、地球に持ち帰る重要な任務があります。その円筒形の衝突体の製作に、東成エレクトロビーム社の電子ビームによる加工技術が使われました。その経緯や、取組状況、社員の反応などについて、JOB 事業部次長 指田達也 さんにお話を伺いました。●はやぶさ2 のミッションに関わることとなった経緯について「JAXA 様から問い合わせがあり、技術陣でわが社のこれまでの経験値から対応できるかどうか検討し、覚悟を決めてお受けいたしました。」●具体的にどのようなオファーだったのですか「円筒形の衝突体には、火薬が入ってるのですが、爆発で蓋が壊れなければなりませんので、柔らかい素材の銅を使用します。本体そのものは、厳しい宇宙空間を何年も旅する訳ですから、劣化しない丈夫なステンレスで製作されています。この組成が大きく異なる金属を接合できないか、ここが今回のオファーのポイントでした。」●熱伝導率や融点が違う金属の溶接は、非常に、難しいのではありませんか「当社では、異種材溶接加工の注文を数多くいただいており、その経験からある程度溶接条件が予想できました。ただ、JAXA 様の重要なプロジェクトですから、失敗しましたでは済まされませんので、かなり緊張もし、気合も入りましたね。」●企業秘密に抵触しない範囲で、具体的に取り組み状況を教えていただけますか「三段階に分けて、試作を行い最終段階まで持っていきました。これまでの異種材溶接の経験データから、銅とステンレスの溶接条件を探りながら、試作を何回も行い、ここというポイントに到達しました。ただ、宇宙空間の厳しい環境は、我々にとって未知の世界ですし、検証テストは、やはり地上の製品テストとは比べ物にならない厳しいものでした。爆発時には、確実に蓋が壊れなければなりませんし、気密性は絶対です。その要求水準が高いわけですから、やはり大変なミッションとなりました。」●このような取組は、貴社にとってどのような影響がありますか「難しい仕事であればあるほど、その経験から学べることはかけがえのない財産となります。その経験値を蓄積し、次世代に継承していくことで、また、新たな挑戦に取り組めるようになります。この、繰り返しが、当社のポリシーであり、強みだと全社員が思っています。自社ブランドでも、レーザ洗浄装置の製造・販売を行っていますが、まだまだ主流は、他社からの受託加工が中心ですので、加工の目的や部品製造の行く先が注目されることは、社員にとって誇りになりモチベーションに大きな影響を及ぼすと思います。わが社は、新しい技術や製品にチャレンジしやすい風土がありますので、これからも、コーポレートステートメントの【常に変化し、進歩を続けよう】を体現していきたいと思っています。若い方々へのメッセージとして、向上心に応えてくれる職場に出会って欲しいことと、より難しいことにチャレンジして、やりがいのある仕事をしていただきたいと願っています。」東成エレクトロビーム(株)では、はやぶさ2 以外にも、「世界最高峰のレースカテゴリー」への部品提供や、自社開発の「レーザクリーニング装置:イレーザー」の製造・販売など、社員のみなさんがわくわくできるような仕事に取り組んでいます。溶接技能・技術が航空宇宙産業でも活かされ、夢やロマンを感じられる出来事がたくさんあることの事例として紹介させていただきました。実際のサイズと同じインパクタ溶接部のモデル東成エレクトロビーム株式会社TOSEI ELECTROBEAM COMPANY,LIMITED本社:〒190-1203東京都西多摩郡瑞穂町高根651-6事業内容・各種受託加工電子ビーム溶接、レーザ溶接、レーザ加工、機械加工等・レーザ洗浄装置の製造・販売(C)宇宙航空研究開発機構(JAXA)