応用課程 開発課題20周年史

温度測定を行うため,設置した温度センサーの配線を, 測定器であるデータロガーに接続した.データロガーは 4チャンネルあることから,洋室としたA室は屋根,南壁, 東壁,北壁を,和室とした B 室は屋根,南壁,西壁,北壁 の各表面温度の測定を行った.また,A室,B室に温湿度 を測定するサーモレコーダーを設置し,室内の温度と湿 度を測定した.計測周期は30分に設定し,本予備測定で は 3 日間の計測を行った.なお,電源には電気配線工事 で施工したコンセントを用いた. 7.2 気密測定の方法と準備 気密測定では隙間相当面積(以下 C 値)を測定する. C値とは測定をすることによって算出される総相当隙間面 積(αA)を,延べ床面積で割った値で,C 値の単位は 「cm 2 /m 2 」であり,C 値が小さいほど住宅の隙間面積が小 さく,気密性が高いことを示している. 一般的に気密測定を行う場合,送風機を開口部にセッ トし,その周りをビニールシートとテープなどで覆い測定 を行うが,今回は環境測定スペースとして専用に設けて いるため,送風機を簡便かつ隙間を生じにくく設置できる ように,南面の腰窓に送風機を設置するために専用の木 枠を作成した.この木枠を用いることにより,木枠を窓枠 内にはめ込み,そこに送風機を取り付け,それぞれの外 周部をテープで養生することで測定が可能となる.実験 方法は室内の空気を屋外に排出する減圧法自動測定で 行い,測定ポイントは,気圧差 20,30,40,50,60Pa で測 定を行った. 8.予備測定結果について 8.1 温湿度測定実験結果 2021 年2 月15 日から 2 月17 日の 3 日間にかけて, 各室でそれぞれ温度測定を行った.今回の測定は 3 日 間という短い期間の測定であるため,測定結果について の考察は難しいが,測定された外気の最低気温-1.4℃, 外気の最高気温13.2℃であったのに対して,屋内は最低 室温 5.6℃,最高室温 21.8℃という測定結果となった.ま た,日中陽の当たる南側壁面では最高で53.2℃に達し, 図2 A・B室の湿度測定結果 反対に屋根面では-8.6℃まで温度が下がることが確認で きた.空調機は使用していない為,基本的に外気温の高 低にならって室温も変化するが,外気温や外装材表面の 温度ほど顕著ではないため,断熱材が効果を発揮してい ると思われる.一方でA室と B室では温度測定値におい て若干の違いはあるものの,明確ではなく,断熱材仕様 の違いによる差であるかは今回の測定結果のみでは確 認することはできなかった.湿度の変化では,図 2 の通り, A 室と比較して B 室の変化は明確に変動が少なく,和室 としたB室が,調湿性能を有していることがうかがえた. 8.2 気密測定結果 気密測定はA室(洋室)およびB室(和室)でそれぞ れ6回の測定を実施したところ表4 の結果となった.測 定結果より,最も低いαA値より C値を求めたところ,A 室(洋室)では5.4[cm 2 /m 2 ],B室では4.0[cm 2 /m 2 ]となっ た.1999年に定められた「住宅に係わるエネルギーの使 用の合理化に関する基準」(以下次世代省エネ基準)で はC値の基準が示され,Ⅲ地域(栃木県)における次世 代省エネルギー基準の目安値とされる 5.0[cm 2 /m 2 ]に対 してはA室の方では下回らなかった.一方で,気密測定 時に今回製作した専用の木枠を用いることによって,比 較的簡便かつ安定して気密測定ができるようになったた め,住宅気密測定方法を体験するスペースとしては活用 できるものと思われる. 表4 気密測定試験結果 部屋 回数 隙間特性値 [n] 総相当隙間面積 [αA(cm 2 /m 2 )] 相当隙間面積 [C(cm 2 /m 2 )] A室 (洋室) 1 1.53 34 6.1 2 1.57 35 6.3 3 1.40 30 5.4 4 1.60 33 5.9 5 1.68 34 6.1 6 1.75 34 6.1 B室 (和室) 1 1.18 26 4.7 2 1.62 36 6.5 3 1.82 25 4.5 4 1.51 22 4.0 5 1.91 26 4.7 6 1.55 35 6.3 9.おわりに 屋外に内外装施工や電気配線まで行い,断熱材を充 填して,環境測定スペースとして使用可能な建築物を施 工し,施工管理に取り組んだことにより,小規模ながら実 際の木造住宅に近い,より実践的な経験をすることができ た.今後は温湿度や気密等の測定を積み重ね,環境測 定スペースとして積極的な活用を図っていきたい. 参考文献 (1)【フラット35】枠組壁工法住宅工事仕様書 平成27年度版,株式 会社井上書院,(2015) (2)(一社)日本サスティナブル建築協会,資料 省エネルギー基準 計算支援プログラム ,http://www.jsbc.or.jp/index.html 251

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