応用課程 開発課題20周年史

238 溶接ボルトスパッタ自動判別装置の開発 菅野 金一 *1 矢野 牧人 *2 神足 昭男 *3 中村 聡 *4 大鷲 浩司 *5 1. はじめに 1.1 背景 環境問題の中で地球温暖化対策が最重要課題となっ ている.特にCO 2 削減が大きな課題である.欧州連合(E U)全体で温暖化ガスの排出量を 55%削減することを目 的とした法案のうち,自動車分野では,欧州委員会(EC) が 2021 年7月14日に新しい法案を発表し,自動車の走 行中に関する二酸化炭素(CO 2 )排出量規制の強化にの りだした.電気自動車(EV)の普及を推し進めるため 35 年までにCO 2 を 100%削減し,事実上,エンジン車の販 売を禁止する方針であるとみられる.自動車メーカーはE V化の加速が更に迫られている. また,自動車は地球環境に配慮し,軽量化も推し進め られており,マルチマテリアル化が進展する見通しである. 自動車構造材は,これまで鉄鋼材料が主体であった.し かし,軽量化により非鉄金属であるアルミニウム合金やマ グネシウム合金,チタン合金が多用されることとなり,非金 属としては,CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの複 合材も軽量化素材として採用されている. 鉄鋼材料では従来使用していた冷間圧延鋼板(SPC 材)から高張力鋼(ハイテン材)が多用され始めている.そ の加工性は,一般に従来の鋼材より難易度が高くなる. 接合加工においても同様で自動車業界で多用される抵 抗溶接の接合性も悪化し,溶接欠陥が発生し大きな問題 となっている. 本テーマは,その抵抗溶接で発生する溶接欠陥のうち 溶接部周辺に飛散し製品に付着するスパッタの検査装置 である.スパッタの対策として,抵抗溶接の電流,通電時 間,加圧力などの溶接条件の検討や治工具の改善が図 られている.しかし,不良発生0にはならないのが現状で あり,その検査装置の開発が望まれている. 1.2 依頼内容 今回のテーマとなる自動車部品も,ハイテン板材へM8 ボルトを2箇所抵抗溶接された部分のスパッタ付着の検 査装置である.現在,部品の検査工程は,人手により品 質管理上から,全数確認工程を昼夜で行っている.夜間 の人員確保が難しいこと,コスト高になること,今後は増 産が見込まれることが問題となっている.ワークと検査用 治具を図1に,作業風景を図2 に示す. 図1 ワークと検査用治具 図2 作業風景 部品の検査工程は,人手により検査用ナットを手締め した後,検査用治具に押し当て,2 箇所のナットと板面の 計 3 箇所のリミットスイッチが押された場合,良品としそれ 以外を不良品と判定している.1個の部品につき検査時 間は 30 秒で処理している.ワークは図 3 に示すように 2 種類ある. (a)ワークA (b)ワーク B 図3 ワーク 2種 また,図4 にスパッタの画像を示す. 図4 スパッタ *1 (関東職業能力開発大学校) 生産機械システム技術科 *2 (関東職業能力開発大学校) 生産電気システム技術科 *3 (関東職業能力開発大学校) 電気エネルギー制御科 *4 (関東職業能力開発大学校) 電子情報技術科 *5 (清国産業株式会社) 技術部 技術顧問 ボルト 板面 やけ 238

RkJQdWJsaXNoZXIy ODQ0MTk3