応用課程 開発課題20周年史

鉄骨造によるアーチ構造物の設計・施工計画の策定・施工管理 徳富 肇 *1 石橋良太 *2 伊瀬谷友香 *2 木村花誉子 *2 佐藤宏祐 *2 佐藤鴻介 *2 松島亘秀 *2 守屋亮汰 *2 1. はじめに 丸木橋は,人類史上,最初期に現れた構造物のひとつ であろうと推測される.以降,土木・建築技術はより幅広く, より大きなスパンに橋や梁を掛けることを目指して技術を 進歩させてきた,とも言い換えることができる.そのような中 で,アーチ構造やトラス構造は比較的軽微な部材の組み 合わせで大きな架構を得ることができる構造形式である. 但し,施工計画を綿密に行わないと,施工できないだけで なく,安全管理上も非常に危険を伴う可能性がある. 応用課程を卒業する学生は,施工管理の業務を行うケ ースが多い.そこで,実践的な課題実習を通し,施工管理 技術を修得することも,開発課題実習の大きな目標である と考える.本課題では,鉄骨造によるアーチ構造物の設計 と施工を行うこととし,施工の分野では,特に施工計画の策 定に重点をおいた実習を展開する.設計から施工に至る, 開発課題実習の意義について,検証する. 2. 課題を実施する際の条件 課題を提示するにあたり,学生には以下の条件で設計 施工するように指示した.一方で,下記条件以外の部分は 自由に設計しても良いこととした. ・施工場所は視聴覚室付近の屋外実習場とする ・アーチ構造とする(岩国市の錦帯橋を参考) ・鉄骨造とする ・床版はPC(プレキャストコンクリート)板とする ・電源がないため現場溶接は不可 ・クレーン車などのリースは行わない(人力で施工) ・制作物の外注はしない(学生の施工が基本) 3. 基本設計 前章で制限した条件のもと,学生が行った基本設計(ス ケッチ)は,以下の形となった(図1). ① 鉄骨造(基礎部分はコンクリート造) ② スパン(柱間距離):7,000mm ③ アーチライズ(むくり):1,000mm ④アーチ 幅:1,500㎜ ⑤ 積載荷重:0.6kN/㎡ ⑥ 床板厚:50㎜(PC板) ⑦ 手摺高さ:900㎜ 基本設計 ②③ より,アーチの形状は,半径 6625 ㎜の円 の一部を切り取った形状となることが判る.これより,円の 形状を示す方程式は,以下のようになる(式3.1). x 2 + y 2 = (6,625) 2 施工後,施工したアーチ構造物の各節点の座標が,(式 3.1)を満足しているかどうか, ⑤ の荷重(体重 60kg の人が 10 人)を積載しても安全かどうか,の観点から性能評価を 行うこととした. 4. 構造計算 重機(クレーン車など)を使わないという制約から,一つ 一つの部材は,人力で運搬できる程度の重量である必要 がある.そのため,「アーチを形成する躯体はトラス構造と する」こととした. 4.1 躯体(アーチ/トラス部分)の断面 <荷重条件> アーチ/トラス部分の部材断面は,次の部材を仮定し,固 定荷重を算出した.桁行方向,および妻方向の主たる部材 は山形鋼を用い,トラスを形成する部材は平鋼を用いるこ ととする. * 1 建築施工システム技術科 *2 建築施工システム技術科 16期生 図1 設計概要 ・・・(3.1) x y 222

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