応用課程 開発課題20周年史

カテナリー曲線によるアーチ構造物の設計・施工管理 徳富 肇 *1 安部真隆 *2 板谷佳祐 *2 大山昌樹 *2 大和絢子 *2 柄澤幹弥 *2 平澤和也 *2 安田 幹 *2 1. はじめに 力学的に均整のとれた構造物の持つ美しさに,心を打 たれることがある.建築を志す者であれば,自らが設計や 施工に携わりたいと感じることもあろうと思われる.ここで は開発課題のテーマとして,カテナリー曲線によるアーチ 構造物を取り上げ,設計から施工,性能評価までを行う.矩 形の構造体ではなく,敢えて曲線構造体を選択する理由 は,標準課題では経験しなかった応用力・問題解決力・創 造力・管理能力を養うことができ,1 年間を通じて飽きるこ となく取り組むことができるためである.本論では,課題実 施の過程と,開発課題で扱うことの意義を報告する. 2. カテナリー曲線によるアーチ構造物 2.1 カテナリー曲線 カテナリー曲線は懸垂線とも呼ばれ,チェーンや電線 などの両端を持って垂らしたときにできる曲線である.部 材に働く引張力と重力の釣り合いにより,力学的に安定し ている.この曲線を重力に対して上下逆向きにした形状と すると,すべての部材に圧縮力が働き,構造体として利用 できる形となる.一般式は次の通りである (式2.1) . ここに, cosh は双曲線関数,(0,a)は懸垂線の頂点の座 標である. 2.2 The Gateway Arch ここでは,カテナリー曲線を用いたアーチ構造物として, フィンランドの建築家,Eero Saarinenが1947年に設計した The Gateway Arch (1) (図1)の設計,施工に取り組むこととし た.この構造物は,モニュメンタルな展望台として利用され ている.約15年にわたる設計見直しの後,2年8か月の工 期を経て 1965 年に完成したもので,アメリカ合衆国ミズー リ州セントルイスに建設されている. The Gateway Arch は,高さ,スパン共に 630-foot (192 m)である.断面は正三角形で,一辺の長さは最下 部 54-foot,最上部で 17-foot となっており,高さに比 例して断面積が小さくなるように設計されている.構 造は,下部が鉄筋コンクリート造,上部はプレキャスト コンクリート造となっている. インターネット上で,Saarinen が残した設計図 (2) を見るこ とができる.設計図の中に BASIS OF CALCULATIONS (計算の基礎)として,以下が示されている(式2.2). ここに,A,C,L は定数で,単位はいずれも foot(=0.3048m) である. また,任意の高さ Y における断面積 Q は,(式 2.3)で定義さ れている. * 1 建築施工システム技術科 *2 建築施工システム技術科 17期生 ・ ���� � � � � � + � � � 2 � ・・・(2.1) 図1 The Gateway Arch � � � − 1 68.7672 �� � � 3.0022 � 625.0925 � � � − 1� � 1262.6651 □ � 125.1406 □ ・・・(2.2) ・・・ 最下部におけるスパンの 重心間距離の 1/2 ・・・ 重心の最高高さ ・・・ 最下部での断面積 単位:foot 2 ・・・ 最上部での断面積 単位:foot 2 218

RkJQdWJsaXNoZXIy ODQ0MTk3