応用課程 開発課題20周年史

213 昇降機本体の制御用マイコンがバッテリの端子電 圧を測定する。バッテリ残量は電圧値から推定し 4 段 階で表示される。 GPS 受信モジュールが取得した位置情報は、サー バーに送られ、位置情報表示画面に使われる。タブ レットには、位置情報取得の有無のみ表示する。 緊急時にはメール送信命令をサーバーに送り、サ ーバーから登録されたアドレスに定型文を送信する。 メールの文例を図 16 に示す。 図16 緊急メールの例 4.3 位置情報の表示 昇降機使用者の自宅には小型シングルボードコ ンピュータを使った LINUX サーバーを設置し、昇降 機の位置情報などを収集する。使用者と離れて暮ら す家族は、サーバーにアクセスすることで昇降機の 位置と移動の履歴を表示し知ることができる。位置情 報表示画面は、 ① 地図上にピンアイコンで位置情報の表示 ② 表示中のピン色とデータの日時との対応表 ③ 選択中のピンの詳細情報 ④ 表示するピンの日時の選択 で構成する。位置情報の表示画面の例を図 17 に示 す。 図17 位置情報表示画面 4.4 昇降機とサーバー間の通信 昇降機とサーバー間の通信は、 LPWA(Low Power, Wide Area)を使用した。LPWA は、周波数帯 として 920MHz 帯を使い、長距離のデータ通信が可 能で低消費電流であるが、データ伝送レートが小さ いという特性を持つ。昇降機からサーバーに送られる データは、数秒ごとの位置情報と緊急送信の命令で ある。そのサイズは数 byte なので、伝送レートは小さ くてよい。使用した通信モジュールは、インタープラン 社製 IM920c である。メーカー仕様では、高速モード 時の最大伝送レートは50 kbps、見通し通信距離は約 400m、長距離モード時の最大伝送レートは 1.25 kbps、見通し通信距離は約 7km である。 本昇降機では高速モードの設定とした。サーバー を当大学校の 5 階の実習室に設置して通信可能な 距離を測定したところ、約 350m であった。高速・長距 離のモードを適切に設定することで、昇降機が自宅 から移動できる数 km の範囲はカバーできると考えら れる。 5. 性能評価 完成した階段昇降機を用いて性能を評価した。表 3に性能評価を示す。階段昇降および平地移動機能 は問題なく動作し、最上段付近における急激な姿勢 変化についても、アームを用いて抑制させることがで きた。また使用者支援機能も正常に動作した。 次に開発仕様を満たさなかったものについて述べ る。開発仕様では被介護者の最大体重を 85kg に設 定したが、実際に体重約 85kg の人が乗り、階段昇降 を行ったところ、階段の上り始めにバランスが崩れ装 置ごと前転しかけた。現象を観察すると、座面角度調 整用シリンダが高負荷となり、指令に対する応答が遅 延したことに加え、装置の重心が前側にあることがバ ランスを崩す原因だと考えられる。また同様の原因 で、階段最大傾斜角度は 31°までとなった。それより も急な角度の階段を上ると装置ごと前方に転倒するリ スクが高まる。今後の改善が必要である。 表 3 性能評価 項目 開発仕様 評価 昇降速度[m/min] 6 6.3 被介護者の最大体重 [kg] 85 65 (まで確認) 階段最大傾斜角度[°] 35 31 6. まとめ 株式会社コーヤシステムデザイン の依頼により高齢者 用低床可搬型階段昇降機を学生達が開発した。依 頼企業において本装置を土台として、実用化に向け た改良に着手している。本開発が多様な介護ニーズ に応える一助になれば幸いである。 参考文献 (1) 内閣府 平成 30 年版高齢社会白書(全体版) 件名:緊急送信 ━ ━━ ━ ━━ ━ ━━ ━ ━━ ━ 本文:昇降機から緊急送信が行われま した。 https://www.openstreetmap.org/?mlat=36. 28250&mlon=139.83135#map=17/36.2825 0/139.83135 213

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