応用課程 開発課題20周年史

210 3.2 機械部 階段昇降機能の機械部のメインはクローラとアームとな る。図5に外観を示す。クローラを駆動させるモータは 1 つであり、モータの動力を平歯車で減速し駆動輪に伝達 する。駆動輪は左右連結されているため、クローラ駆動の 昇降は前後進のみで、左右回転差による旋回や操舵は できない。階段に対して直角に進入させる必要があるが、 クローラベルト外周の山型部を左右揃えることで、段差に 対して同じタイミングで上るようになり、直進性が向上する。 またクローラ履帯は側面から見て「くの字」形になってい る。これは階段の上り始めの際に、1 段目のエッジにクロ ーラを確実に接地させる工夫である。また電力が絶たれ たときの装置の落下リスクを防ぐために、無励磁作動型の 電磁ブレーキをモータの出力軸に設置した。 次にアームについて説明する。アームは円弧形状とし た。これは駆動トルクを軽減させる工夫である。図5のよう にクローラが床に対して水平な状態から、アームを展開し て装置を車いすモードに移行する際、負荷が最大になる のは水平状態から装置を起こすときである。アームを円 弧形状にすることで、回転中心に近い車輪から順に床に 接地させることができ、負荷を軽減させている。アームを 駆動させるモータは1つであり、平歯車およびチェーン伝 達のスプロケットで減速し、アームの駆動軸に動力を伝達 している。アーム駆動用モータは、クローラ駆動用モータ の2/3程度のトルクが必要となるが、計算値に対して直近 上位のモータを市販品から選定し、クローラと同じ DC モ ータとした。車いすモードでは、アームを展開した状態で 固定する必要があるため、クローラと同じ電磁ブレーキを アーム駆動用モータの出力軸に設置した。表2にクロー ラ部およびアーム部の動力について示す。 図5 クローラとアーム 図6 クローラ・アーム駆動部 3D図 また図6のようにクローラとアーム用のモータおよび減 速ユニットはクローラ履帯の内周に収まるように設計した。 これより装置全体をコンパクトにすることができた。 表2 動力 クローラ部 アーム部 モータ定格トルク[N・m] 0.98 0.98 モータ定格回転速度 [min -1 ] 2500 2500 減速比 1/140 1/625 駆動軸回転速度[min -1 ] 17.9 4 駆動軸トルク[N・m] 140 625 3.3 制御部 制御部の構成を図7に示す。制御部は、操作スイッチ や階段昇降機に取り付けたリミットスイッチからの指令に より、マイコン(ルネサスエレクトロニクス製 RX621)でクロ ーラ駆動用モータ、アーム駆動用モータ、電磁ブレーキ、 および電動シリンダを制御する。 電源は、階段昇降機とは離れた場所で充電できる利便 性を重視し、簡易に脱着できる電動アシスト自転車用のリ チウムイオン蓄電池(25.2 V, 13.2 Ah)を用いた。電池の 定格容量は、表1に掲げた連続使用時間 30 分を十分に 満足する。 図7 制御部の構成図 クローラは昇降動作、アームは収納・展開動作となるた め、クローラ駆動用モータ、アーム駆動用モータともに 正・逆運転が必要となる。クローラとアームは独立に制御 する必要のあることから、モータ駆動基板は同一のHブリ ッジ回路を2回路実装した。H ブリッジ回路は上アームを P-ch 、下アームを N-ch の MOSFET で構成し、下アー ムのみ PWM 制御する方式とした。また、マイコンと H ブ リッジ回路はフォトカプラを介して電気的に絶縁した。 クローラとアームに設置した電磁ブレーキは ON/OFF 動作であるため、トランジスタによるスイッチング回路で電 磁リレーを介してブレーキを制御した。 電動シリンダは付属のコントローラで制御した。製作し た制御基板から、24 V電源とシリンダの伸/縮信号を付属 のコントローラへ送っている。 図8(a)に製作した制御基板の外観を示す。階段を上 る際にモータに流れる電流は11 A程度であるが、その電 流値における基板の効率は 95 %であった。制御基板は 図8(b)のようにケースに収納し、図6のアーム先端部側 のクローラ間に取り付けた。 210

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