応用課程 開発課題20周年史

209 2. 全体概要および仕様 2.1 全体概要 依頼にもとづき階段昇降機を開発した。図 2 に全体の 外観を示す。クローラとアームを使用して階段昇降を行い、 アーム先端に取り付けられた車輪とオムニホイールより、 平地移動(車いすモード)を実現する。座面の下に電動シ リンダを設け、座面角度を変化させ、座面を地面に対して 平行に保つことで被介護者の姿勢の安定を図る。 使用者支援機能として、座席背面にタブレット端末を配 し、使用者(介護者)にむけて有益な情報を提供する。 図2 本装置の外観 2.2 仕様 本装置の仕様を表1に示す。使用環境における最大階 数は依頼企業から 4 階を提示されたが、一般的な公営住 宅の仕様を考慮し、開発仕様を 5階までに拡張した。 表1 仕様 項目 要求仕様 開発仕様 車 体 全長[mm] 1000 1000 全幅[mm] 600~700 600~700 座面高さ[mm] 460~640 460~640 座面角度調整機能 有り 有り 前輪直径[in] 4~5 4~5 後輪直径[in] 6~10 6~10 昇降速度[m/min] 6 6 情 報 支 援 GPSによる 位置情報提供機能 有り 有り 音声ガイド機能 有り 有り プッシュ通知機能 (緊急メール) 有り 有り 使 用 環 境 被介護者の 最大体重[kg] 85 85 最大階数 [ 階 ] 4 5 階段最大傾斜角度 [°] 35 35 踊り場 幅x奥行 [mm x mm] 指定なし 1450×3000 連続使用時間[min] 30 30 3. 階段昇降および平地移動機能 3.1 概要 開発する階段昇降機能の特徴を述べる。前述のとおり 市販機は最上段付近において1点支持になり不安定とな る。その解決策として本装置では図3のように階段の最上 段付近においてアームを展開し、アームについた車輪を 床に接地させることで、2 点支持とし姿勢の安定を図る。 上り終わりの場面ではアームを展開し、最上段の床に接 地させたあと、クローラを駆動させて階段を上りきる。下り 始めの場面ではあらかじめアームを収納した状態からス タートする。クローラが最上段エッジからせり出していき、 上から2段目のエッジにクローラが接地できるように、 徐々にアームを展開しながらクローラを前進させる。クロ ーラが2段目と最上段で支持され安定したら、アームを収 納し階段を下りる。このように階段昇降時は常に2点以上 で支持することで問題解決を図った。また平地では車い すのようにフリーで移動できるように、オムニホイールを 設けた。平地移動時はアームを立てて、オムニホイール とアーム先端の車輪で支持する。このときクローラは床と 接触しないためキャスタ移動が可能となる。また座席下に 電動シリンダを設け、座面角度を地面に対して平行に保 つ機能を付与した(図4)。 図3 最上段付近の姿勢制御 図4 座面角度制御と平地移動 209

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