応用課程 開発課題20周年史

200 「フィルムケースピッキング装置の開発」の取組みについて 小島篤 *1 ,蝦名 健一 *2 ,浅野 博 *3 1.はじめに 関東職業能力開発大学校では,応用課程2年時に開 発課題実習を行っている.生産システム技術系の開発課 題は,地元企業からのテーマをもとに取組んでいることが 特徴の一つである.企業テーマでは,依頼元企業との打 合わせや,ときにはシビアな要求に応える場面もある.こ のような経験をしながら装置開発に取組むことができ,学 生にとっては企業人になる前のプレ訓練として非常に効 果があるものと考えている.また,地域企業との連携が図 れることで,校としても有効な取り組みとなっている. 本報では,平成29 年度・平成30 年度の 2 年間にわた り開発課題として取組んだ「フィルムケースピッキング装 置の開発」において,学生が製作した装置の概要と成果 について報告する.なお,この課題は,卒業生の就職先 企業からの依頼であり,教育訓練としての位置づけととも に地域企業への貢献も目的の一つとなっている. 2.テーマ概要 依頼企業では,両面プリント基板(以下基板)を製造して いる.基板の製造過程で回路パターンや品番のシルク印 刷を行なうためにフィルムを使用している.フィルムは基 板の種類ごとに図1のフィルムケース(以下ケース)に収納 している.ケースは約 5000 枚あり,図 2 の専用フィルム棚 (以下棚)で保管をしている.1日で製造する基板は平均で 20 種類あり,帰宅前に翌日製造分のケース 20 枚程度を 準備する.現状の作業は人手により,ケースに記載した 型番をもとに探して取出しをしている.そのため,以下のよ うな問題点がある. ①探すのが大変で時間がかかる ②ヒューマンエラーによる型番の見間違い ③棚の高さが 2400mm あり最上段のケースの出し入れ が困難 ④ケースの保管位置が明確に管理されていない これらの企業課題を解決するために企業から提示され た企業要望と製作した装置仕様を表 1 に示す.ケースの ピッキング枚数については,最大 20 枚を想定して開発し た.タクトタイムに関しては,無人になる業務終了から翌 朝の始業時間までの 10 時間で取出すことができれば良 いとの依頼であった.そのため,1 枚当たりの平均取出し 時間は 30 分とした.また,フィルム管理システムは,事務 所PC・管理PC・タブレット端末により構築した.事務所PC には,生産計画をもとに管理PC に作業指示を送るアプリ ケーションを実装した.また,管理 PC には,棚に保管さ れているケース情報(フィルムの管理番号や保管位置等) を実装した. 図1 ケース 図2 棚(300枚収納) 表1 装置仕様 3.平成29 年度の取組み 3.1概要 生産機械システム技術科 5 名,生産電気システム技術 科5 名,生産電子情報技術科6 名の計16名のグループ 構成であった. 棚が設置されている工場内のレイアウトを図3に示す. 初年度の取組みであったため,ケースをどのようにして取 出すかに焦点を絞って製作を行なうこととした.そのため, 走行は直線のみとして図3 の棚①から棚③に保管されて いるケースの取出しを想定して開発した. 人がケースを取出す動作は,隣接するケースをかき分 項目 企業要望 開発目標 最終結果 ピッキング 枚数 15〜25枚 20枚 20枚 一枚当たり の取出し時 間 30分 20分 18分30秒(最大) ※棚の位置による 装置寸法 W:955[mm]以内 D:1200[mm]以内 H:2800[mm]以内 W:800[mm] D:800[mm] H:2500[mm](最大) W:800[mm] D:800[mm] H:2500[mm](最大) 成功率 100% 100% 完成後実験 *1 (関東職業能力開発大学校)生産機械システム技術科 *2 (関東職業能力開発大学校)生産電気システム技術科 *3 (関東職業能力開発大学校)生産電子情報システム技術科 680[mm] ケース フィルム 900[mm] 920[mm] 2400[mm] 1段目(100枚) 2段目(100枚) 3段目(100枚) 200

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