応用課程 開発課題20周年史

関東職業能力開発大学校 第 26 回 ポリテックビジョン in 栃木 166 貫式フィーレンディールトラス構造の施工に向けた検討 グループ 9 建築施工システム技術科 ○中山和喜 加藤大夢 平澤大地 髙瀬宗一郎 1.はじめに 日本では , 戦後 , 造林された人工林が資源として利用 可能な時期を迎える一方 , 木材価格の下落等の影響など により森林の手入れが十分に行われず , 国土保全など森 林の多面的機能の低下が大いに懸念される事態となっ ている . このような状況から , 木材を使うことにより森 を育て , 林業の再生を図ることが急務となり , 平成 22 年 に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する 法律」が制定された . この法律の施行により , これまでに なかった様々な構法で中大規模木造建築物が建てられ るようになり , 今後も増えていくと考えられる . そこで , 私たちは新たな木構法について知識を深める ことを目的とし , 構法の検討 , 実験による性能の確認・検 証を行うことにした . 2.貫式フィーレンディールトラス構造について 様々な構法で建築される中規模木造建築物の中で, 貫式フィーレンディールトラス構造に着目した. 貫式フィーレンディールトラス構造は,図 2.1 に示 すように柱に貫を多段に通し,込栓と楔を用いて接合 することで木質ラーメン構造としている. 図2.1 貫式フィーレンディールトラス構造 この構法に着目した理由として,梁を多段にして接 合部を増やすことで , 一つの接合部にかかる荷重を小 さくでき , 部材断面を小さくできること , 接合部の強度 によって柱や梁の本数を調節するなどの工夫ができる こと , そして中大規模木造建築物に必要となる接合部 の設計法を学ぶことができると考えた . 3.接合部の設計 接合部の設計には , 日本建築学会が出版している木 質接合部設計マニュアル¹⁾,北方建築研究所が公開し ている接合部開発・設計の手引き²⁾を参考にした. 貫 式フィーレンディールトラス構造のような半剛接合と なる接合部の耐力を知るためには , 回転剛性 , 最大モー メントを知る必要がある . 込栓を用いた接合部の回転 剛性は , 込栓一本一本の回転に抵抗する耐力を合計し たもので求められる . 込栓一本ごとの抵抗特性にはすべり係数と最大耐 力がある.込栓に荷重がかかると込栓がめり込みなが ら抵抗する.この荷重とめり込み量の関係から図 3.1 のようにすべり係数と最大耐力を知ることができる. すべり係数は樹種や木材の繊維に対する方向の違いで も大きく異なる. 図 3.2 に接合部が回転変形した時の様子を表す.各 込栓がめり込むことにより回転変形し,すべり係数に 回転中心から込栓までの距離の2乗を掛け合わせるこ とにより回転剛性を求めることができ,込栓一本あた りの回転剛性の値を合計した値が接合部全体の回転剛 性と考えることができる. 荷重 ( 引張力 ) 変形 ( めり込み量 ) 最大耐力 Pmax すべり係数 Ks α(rad) 柱の角度 α を傾ける力 柱の角度 α を傾ける力 回転中心 0 度方向に移動 0 度方向に移動 90 度方向に移動 90 度方向に移動 込栓までの距離 r₀ 図3.1 すべり係数 図3.2 回転変形時のモデル 4.すべり係数試験 3種類の樹種について各方向のすべり係数を実験 により求めた.杉材の実験結果を表4.1に示す. 表4.1 杉の角度ごとのすべり係数 (kN/mm) 0° 22.5° 67.5° 90° すべり係数 2.78 2.97 3.86 4.06 5.接合部試験 接合部としての耐力を知るために接合部試験を行っ た.接合部耐力はすべり係数を用いて耐力予測を行い. 実験値と比較,検討した. 5.1. 接合部試験体と耐力予測 柱材 120×120mm,貫材 45×120mm とし,φ15 の込栓 を図5.1.1に示すように中心より35mmの位置に8本, 円形に配置した.耐力予測として表 4.1 のすべり係数 から算出する.図5.1.2のように引張力Pがかかった時 に,込栓は①から②のようにめり込む.変形角 rad が 1/450 のときの込栓のめり込み量 S は回転中心からの 距離(35mm)×変形角(1/450)なので 0.078mmになる. このめり込み量 S に角度ごとのすべり係数を乗じ,そ の値を合計することにより,変形角 rad=1/450 のとき 接合部の耐力は2.13kNと予測できる. 居住・建築システム技術系 開発課題

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