応用課程 開発課題20周年史
関東職業能力開発大学校 第 26 回 ポリテックビジョン in 栃木 165 くなるのではないかと考察したが,各方向の共振周波 数は段階ごとに数値が上がっていない部分が見られる. その理由として,剛性は確かに上がっていても,各段階 で建物全体の重量も増加しているため,このような数 値の結果になったのではないかと判断した. 4.2. 建物の安全性 「2.2早稲田式動的耐震診断」で述べている通り(C) を求める予定であったが,応答加速度の測定方法に問 題があり,応答加速度を出すことができなかったため, この方法では判断できなかった.その代わり,「4.3震 度階級との比較による安全性の判定」で震度階級を用 いて判断することができた. 4.3. 減衰傾向の比較 当初は,段階が上がるほどに減衰定数の数値は小さ くなるのではないかと判断したが,第 4 段階→第 5 段 階→第6段階と数値が大きくなっている.その理由と して,第 4 段階では骨組み+屋根であるが,第 5 段階で は第 4 段階の状態から外壁,そして第 6 段階では更に 内壁が加わった.外壁や内壁が加わったことで,外側か らは外壁材,内側からは内壁材で覆われているため,一 体性が高まる.内側からも外側からも一体となる要素 が増え,より建物全体で揺れるため減衰するまでに時 間がかかってしまい,減衰させる力が減少して減衰定 数の値が小さくなるのではないかと判断した. 4.4. 震度階級との比較による安全性の判定 気象庁の定める「周期および加速度と震度の関係」 2) , に照らし合わせ,試験結果の加速度応答倍率及び応答 変位から各震度階級時の加振加速度にどの程度の水平 変位が発生するかを推定し,それが建物にとって危険 な変位かどうか判断する.今回は,各段階で震度 7 の 地震に対してどの程度の安全性があるのか判断した. 第 1 段階の 1 階骨組み筋かい無しの状態では,震度 7の地震に対して「やや危険(C)」であるのに対して, 第2段階の1階骨組み筋かい有りの耐力壁の状態にな ると,「十分安全(A)」な状態となる.そして,2階部分 ができた状態や屋根、内外装が加わり竣工した第6段 階の状態では、第2段階の十分安全な状態より数値 が小さくなり更に耐震性が高まり,安全性が深まった ことが結果から判断できた. 5. 最後に 本開発課題を通して,木質構造建築物が出来上がっ ていく過程で建物の耐震性(水平剛性の変化など)が どのように変化していくのか,また木質構造建築物の 耐震性に及ぼす耐震の要因について振動実験により理 解できた.そして,木質構造建築物は卓越した共振周波 数が複数出現することを今回の研究で気づけたことは, 大きな発見であった.今後は,耐震性能も考慮できるよ うな技術者になりたいと考える. 参考文献 図3 震度7相当の地震時の想定変位 図2 第6段階(完成時)のX方向のPSD解析結果 表1 X方向の耐震診断結果一覧 1) 株式会社ジオフィール.「木造家屋の早稲田式動的耐震性能診断」. 平成 19 年度.taishin.pdf ( oo7.jp) 2) 気象庁.「周期および加速度と震度(理論値)の関係」. https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/kyoshin/kaisetsu/comp.htm 第1段階 4.65 第2段階 7.21 第3段階 5.19 4.21 9.03 14.95 21.42 第4段階 4.87 4.33 9.95 13.37 21.36 第5段階 4.58 9.64 23.68 30.15 第6段階 4.39 22.71 32.65 34.00 7.02 4.28 4.27 8.97 段階 X方向 計算値 (Hz) スイープ試験 強制振動試験 減衰試験 震度7相当の地震時 の想定変位角(rad) 一次共振周波数(Hz) その他の共振周波数(Hz) 加速度応答倍率 減衰定数 5.43 0.45 0.027 1/401 7.69 0.17 1.33 0.038 1/93 0.064 1/1088 2.09 0.026 1/114 0.59 0.028 1/409 9.40 0.16 0.074 1/1328
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