応用課程 開発課題20周年史

関東職業能力開発大学校 第 26 回 ポリテックビジョン in 栃木 164 木質構造建築物の施工・施工管理及び性能評価の実践 ~その2 動的耐震診断~ グループ 8 建築施工システム技術科 〇中村圭祐 丸橋優也 馬場有咲 小島海月 1. はじめに 本開発課題では,木質構造建築物が出来上がってい く過程で建物の耐震性(水平剛性の変化など)がどの ように変化していくのかを振動実験により耐震性能評 価する.これにより,既存建築物の一般的な動的耐震診 断の診断技術や評価方法を理解するとともに,木質構 造建築物の耐震性に及ぼす耐震の要因について理解を 深めることを目的とする. 2. 耐震性能評価の概要 2.1. 動的耐震診断 動的耐震診断は,起振器から建物に震度1程度の微 動な振動を与え, 床に設置した加速度計により応答加 速度を測定することにより建物の地震動に対する挙動 を検知し,得られた測定結果から「震度いくつの地震ま で安全性が高いか」を評価する方法である.また,加速 度計を分散して複数箇所に設置することで,それぞれ の箇所で検知された測定結果より「, 建物のどの部分が 1番揺れやすいか,また弱点か」などを評価することも できる. 2.2.早稲田式動的耐震診断 1) 動的耐震診断の唯一の評価方法である早稲田式動 的耐震診断では,建物に強制的な微振動を与える代わ りに,人体では感じることの出来ないような常時微動 を測定することにより,建物の共振周波数を推定する. さらに,建物の応答加速度倍率や減衰傾向を求めて得 られる耐震性評価指数(C)により建物の地震に対する 安全性を 4 ランク(A:十分安全,B:安全,C:やや危 険,D:危険)により評価を行う方法である. この診断方法は,完成した後の建物に行う診断方法 のである. 3. 開発目標(実験内容) 3.1. 評価対象建物 今回,評価対象とする建物はグループ 7 と共同で建 設を進めた木造在来軸組工法の2階建てとした. 3.2. 動的耐震性能評価 本開発課題では,前章の耐震性能評価による診断や 評価を基に,私たちが出来る試験方法にアレンジして 行った.また,建設過程で試験することから,動的耐震 診断ではなく動的耐震性能評価と呼ぶこととする. 3.2.1. 試験方法および評価方法 以下に示す各振動試験は,X方向及びY方向の2方向 をそれぞれ試験した. 1)スイープ(掃引)試験 スイープ試験は,一定加速度で加振周波数を変化さ せ加振することにより建物の共振周波数を測定する試 験である.加振する起振器は2階床の重心位置に設置 した.加速度はその近接位置に三軸のサーボ型加速度 計を固定し測定した. 2)強制振動試験 強制振動試験は,一定の加速度および一定の周波数 で加振する試験である.加振周波数は,スイープ試験で 測定された 1 次共振周波数とした.加速度計の設置個 所は,2 階床の中央部と 4 隅の計 5 か所として,各部分 の応答加速度を測定する.使用した加速度計は,スイー プ試験と同じ3軸のサーボ型加速度計を使用した. 3)減衰試験 減衰試験は,強制振動試験同じ測定場所に加速度計 を設置して,強制振動を停止させることで各場所の応 答加速度の減少を測定した. 4. 試験結果及び考察 4.1. 剛性の変化 剛性の変化は,スイープ試験で測定した共振周波数 で判断する.一般的に鉄骨鉄筋コンクリート・鉄骨造 では,階数(支点)と同じ数の卓越された周波数があり, そこが共振周波数となる.しかし,今回建設した建物で は複数の卓越した共振周波数が読み取れた.その理由 として,木質構造建築物は金物や継手,仕口を設けて建 設しているため,建物全体が一体となって共振してい ない.そのため,骨組みのみで共振する部分や建物全体 で共振する部分など,共振する部分が複数あるのでは ないかと考えた. また,各段階で剛性が上がり共振周波数の値も大き 図1 住宅の水平荷重(Q)・変形角(rad)関係と 耐震性評価ランク 居住・建築システム技術系 開発課題 2007年3月「樫原健一・河村廣:木造構造の耐震設計(リカレントな建築を目指して)に加筆 1/120 1/60 1/30~1/15 水平荷重:Q 変位角:rad

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