応用課程 開発課題20周年史

関東職業能力開発大学校 第24回 ポリテックビジョン in 栃木 145 4.実験結果および考察 1)耐震抵抗部材(耐力壁)の影響(図2.3.4参照) 耐震抵抗部材を付加することによって,水平剛性が 増加し,剛性が大きいほど共振周波数が大きくなるこ とが検証できた.さらに,加振周波数が共振周波数に近 くなることで応答加速度は大きくなるが,剛性が上が ることにより,周波数がより細かくなるため,相対変位 に大きな変化はなく,加速度応答倍率が大きくなるが 相対変位は小さいままであることを検証できた. 2)屋根重量の影響(図2参照) 重い屋根にすることによって共振周波数が低下し, それに伴って耐震性能も低下することが検証できた. 3)偏心の影響 建物の重心と剛心の偏心距離が長くなることによっ て建物には地震動に加えてねじれが生じる.本実験で は,共振周波数以外の周波数によっては高周波数と低 周波数の偏りが発生するため,ねじれを生じにくくな ることも検証できた. 4)制震部材の影響(図5.6参照) 開発した振動実験モデルを利用して,制震部材の振 動実験ができることが実験を通してわかった. 応用課題で作成した制震ダンパーを用いた場合,偏 心の振動をXY軸での振動に置き換えて実験を行った. 制震部材がそれぞれの方向に対しての減衰振動を短時 間で抑制できることが検証できた.断熱材を用いた場 合,耐震性能の一部である加振加速度に対する応答加 速度の低減が分かり,また,制震性能の面でも制震効果 の指標の一つである一秒間に下がる加速度が断熱材の 方が大きいことが分かったため,振動エネルギーを抑 制し,制震効果の働きをする減衰傾向が検証された. 5.おわりに 本開発課題で開発した振動実験モデルで木造建築物 の耐震性能や制震性能を振動の観点から見える化する ことがある程度できた.しかし,この振動実験モデルの 加工精度(特に仕口部分)や数多くの繰り返しによる 振動実験に耐えうる耐久性能などに問題が残った. また,本校の振動システムを利用した振動実験には, モデルの大きさや振動条件(加振加速度や可動変位の 制限)に制約があるため,木造建築物の初期の変形性状 (1/200rad程度以下)での検証までしかできなかった. 今後は,振動台以外の試験装置を用いた性能評価試 験や実大建築物の振動実験などさらに発展させる必要 があると考える. 参考文献 1)朝倉侃人:木造立体骨組みの模型振動実験,東北能開大,開発 課題・応用課題予稿集,2019.2 2)黒澤篤志 大久保健志 千葉拓也:FP軸組建物の制震効果の検 証,東北能開大,開発課題・応用課題予稿,2018.2 5.75 Hz 10.03 Hz 8.05 Hz 11.70 10.80 8.05 10.80 1.61 Hz 0.0 3.0 6.0 9.0 12.0 15.0 周波数(Hz) 片筋違い 面材 2 枚 面材 3 枚 面材 2 枚(重量) 面材 3 枚(重量) 基本形 耐震補強 重い屋根 軽い屋根 図 2 共振周波数の変化 -100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 10 11 12 13 14 15 加速度比 時間(S) 面材2枚 断熱材 断熱材45mm 46.4gal/s 面材2枚 33.7gal/s 図 6 断熱材(硬質ウレタンフォーム)の減衰傾向 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 低周波数( 2Hz ) 中周波数( 7Hz ) 高周波数( 12Hz ) 加速度応答倍率(=応答加速度/振動台) 基本モデル 片筋違い 面材 2 枚 面材 3 枚 面材 2 枚(重量) 面材 3 枚(重量) 図 3 加速度応答倍率の変化 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 低周波数( 2Hz ) 中周波数( 7Hz ) 高周波数( 12Hz ) 相対応答変位(=応答変位-振動台変位) 基本モデル 片筋違い 面材 2 枚 面材 3 枚 面材 2 枚(重量) 面材 3 枚(重量) 図 4 相対変位の変化 0 40 80 120 160 -0.5 0.5 1.5 2.5 3.5 加速度比 時間(S) 偏心 偏心Y方向制震 偏心XY方向制震 図 5 制震ダンパーの減衰傾向 145

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